およそひと月前の1月下旬。
2018年の新年度開講説明会を終え、ひと息つける…と思っていた矢先の電話でした。
電話の声の主はNHKの芳川アナウンサー。
よくニュースでお見かけするその方からの直接の電話、いやそれどころかなぜNHKがKOMABAに電話を…?という混乱のまま伝えられたことは「KOMABAの総合学習で取り組んでいる防災授業を取材させてほしい」ということでした。
自分の塾の授業をメディア、しかもNHKに取り上げてもらえるなんて、誰がどう考えても嬉しいにきまっています。
しかしながら、その授業内容が「防災」である…そのことが一瞬の喜びに冷水をかけました。
授業中や飲み会で興奮するとズーズー弁になるように私は宮城で生まれ育ち、岩手で牧歌的(ロック的?)な大学生活を送り、妻とは福島で知り合い、シンガポールに来る前は山形で働いていた、というくらい東北人を自負しております(秋田と青森にも思い出がいっぱい!)。
東北、大好きです。
心の師の宮沢賢治が描くように、厳しさと豊かさを兼ね備えた風土。
海外に出て10年以上が経っていますが、離れても東北人であるアイデンティティーが私の支えです。
その東北を襲った大地震と大津波、最悪の人災…7年前のことです。
以来、確かに毎年3.11の前には子どもたちには震災のことを伝え、防災の知識を伝え、日本に帰った時に必要なことだから!と声高に授業をしてきました。
ただ、それは正直に書くと「もしもその授業が被災された方が見たならば…」と考えると胸を張れるものではなかった気がしていました。
被災者、と言っても一人一人が突き付けられた境遇が違います。
被災地、と言っても場所ごとで被害の状況も違えば復興の足取りも違います。
いくら東北人と自負したところで海外に住む私には、違う、ということは分かっても何がどう違うのかを語ることはできません。
それなのに授業では「子どもたちに伝わりやすくするためだ」と言い訳しながら、安易に震災と防災を語ってしまっている、という自分自身への疑念があったのです。
その授業を取材していただく、ということはおそらく被災地の方や被災された方々もご覧になるわけです。
指導する目の前の子どもたちの後ろには、多くのそういった方々の目が無数にある……
そんな状況でいったい何をどのように授業で伝えたらよいかのか……?
今回やろうと思っていた授業の内容を、全て白紙に戻さなければ……
芳川アナウンサーからの電話での質問に応えながら、頭の中は妙に冷めていくのを感じていました。
〈②に続く〉
石川