自律と自立を育むシンガポールの学習塾
学習塾KOMABAシンガポール
+65 6736 0727
平日 13:00-22:30 土 9:30-19:00 日休

Over the Wall -ケニア- ③

子どもたちは朝10:00に園の運行するバスでやってきます。
どんな障がいを持っているかは様々。

登録は全部で100名ほどいるそうで、それぞれの子どもたちが週に1回〜3回、ここシロアムの園に通ってきます。

「文字が読めない子が多いから」と、靴箱や椅子には子どもたちの名前が書いてあるのではなく、それぞれの好きな果物や乗り物、楽器なんかの絵が貼り付けてあります。
ところがその絵には、日本であれば必ずありそうなゾウさんとかウサギさんとかはありません。

「ここの子たちは『イラスト化された動物』を嫌うんですよ。『こんなのは本物じゃない!』と言ってね」
公文先生は笑いながら、日本の無料でダウンロードさせてくれる某イラストサイトのかわいらしいキリンを指差しながら教えてくれました。
先進的なIT技術によって「イラスト化された世界」で幸せを求めているかのような現代社会。
『こんなのは本物じゃない!』という子どもたちの声にはっとさせられました。
(ミヤザキケンスケがちょいちょい背景に描くテキトーな動物の絵もアウトでしょう笑!)

その絵が貼ってある、椅子一つ一つ。
車椅子の一つ一つ。
部屋やトイレや子どもたちが園で生活する一つ一つ。

「子どもたちによってできる動作が異なるから」
それぞれに合わせて作られ、工夫がいたるところに凝らされています。
車椅子があればいい、障がい者用の器具があればいい、という考えではなく、名前のある一人一人の子どもたちへの思いが話の端々、そして何より公文先生の弾けるような笑顔から伝わってきます。

園には一年を通してたくさんの見学者が来る、とドライバーのジョニーさんは言います。
きっと公文先生のこうした配慮は、子どもたちみんなを深く愛するからであるのと同時に、見学者の中にいるケニアの特別支援教育に関わる人たちへの指針を示すメッセージにもなっているのであろうと思います。

20年以上前、僕がバングラデシュの支援で現地を訪れた時に、日本の援助で作られたたくさんの廃墟化した学校や施設を見ました。
開発途上国に対する支援の難しさの一つに、その後に有効利用されない建設物を作って終わり、というのがあります。
建物のために援助して一定の満足度を得た人たちの思いとは裏腹に。

ここシロアムの園には、建設のために支援したたくさんの人の思いがあって、
運営のために継続的にサポートしているたくさんの人の思いがあって、
日々障がいを持つ子どもたちのために力を尽くす公文先生と職員の方々の思いがあって、
ケニア社会における障がい者の教育の未来を拓こうとする公文先生と職員の方々の思いがあって…
それらがぎゅうぎゅうにがつまっています。


とってもとっても素敵な場所です。

石川