前回のブログで書いた、音楽教育を広めて定着させたい、という思い。
しかしながらそもそも必要とされていないのでは、という思い。
悩みは複雑になる一方でした。
そんな時、私がいつも頼りにしていたのがカウンターパートのディック先生です。
彼はいつでも私の率直な相談を受け止め、ジンバブエ側、日本人側の両面から物事を考えてくれる柔軟さを持っていました。
何度も話を重ねた結果、私たち二人が至った目標は「国歌を正しく歌えるようにする」ということ。
ジンバブエの国歌は旧南ローデシアの名残があった国歌から1994年に刷新されていて、2003年当時としてはまだ新しい歌でした。
ジンバブエの小学校では毎週月曜日と金曜日の必ず朝礼でこの国歌を歌います。
また当時は年に一回の全国規模の合唱コンクールでも国歌の3部合唱が課題曲でした。
ところが、これが学校によって「別な歌」になってしまうことがしばしばあるのです。
国歌の旋律は5線紙に音符で記されます。
キーはG(ト長調)。
しかし12音階の楽器が必ずあるわけではない学校でキーがGと言われても分からず、先生が歌いやすいキーになってしまう。
いや、そもそも先生が音符を読めない。
「先生たちは国歌を正確に歌えるようになりたいと本気で思っているし、子どもたちもそう願っている」
ディック先生のこのひと言が、私の悩みを断ち切りました。
残りの時間でチャカリの小学校で国歌を正しく歌えるように根付かせる。
そのために寄付されたピアニカを使う。
先生にももちろん教えるが、先生は転勤してしまうかもしれないので、上級生から下級生に伝えていくよう「ピアニカクラブ」を作る。
通常の小学校での指導をこなしながら、毎日、放課後をつかってこの「ピアニカクラブ」の指導に励む日が続き…私は2004年の暮れに日本に帰国しました。