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連載「日々邂逅06」—KOMABAを立ち上げたきっかけ その5—

日々邂逅06
ーKOMABAを立ち上げたきっかけ その5—

 

2011年9月、ミヤザキケンスケさんはシンガポールの地にいました。

多賀城での絵をネットで見たその夜、私は自分の思いを伝えるべくミヤザキさんにメールを出しました。

そしてわずか何回かのやり取りの後、ミヤザキさんは「じゃあ、多賀城で描いた絵をシンガポールに持って行く。そして一緒に被災地支援活動をしよう!」と言ってくれたのです。

それからミヤザキさんは、私とシンガポール在住の仲間・協力者たちと一緒に、数多くの絵のワークショップを行い被災地支援活動を行いました。

(その期間のことは、ミヤザキさんが自身のブログで綴ってくれています)

 

活動は「被災地に届ける絵を子どもたちに描いてもらう」というものでした。

しかし私はその活動で普段(塾講師)とは違った形で子どもたちと接するにつれ、では教育を通して何を伝えるべきなのか・・・以前よりもずっと考えるようになりました。

 

塾講師、という職種の役割は何なのか。

試しに検索をかけてみると「学校の予習復習や受験対策を軸とした学習指導をする仕事」と記載されています。

間違いなく子どもたちの成長に必要で、ここシンガポールの多様な海外子女のためにも必要な役割です。

 

しかし私たちは、少なくともあの瞬間はそんな役割をものともしない、東日本大震災という危機的な状況に遭遇してしまった。

いや、震災という災害遭遇に限らず、間違いなく子どもたちの未来には予測不能な事態が待ち構えている。

そんなとき、子どもたちが自分の人生を主体的に、強く・豊かに生きてほしい。

あのような未曾有の災害に遭っても前を向き、こちらが元気づけられるくらい力強い光を放っている被災地の子どもたちのように、日々を生きてほしい・・・・・・。

そんな思いがミヤザキさんとの活動を重ねるごとに強くなっていきました。

 

防災のために必要な「三助(さんじょ)」という言葉があります。

自助・共助・公助。

災害が発生した時、

自助—自分自身を助けること

共助—特定の他者と助けあうこと

公助—不特定の他者と助けあうこと

この3つをうまく連携させ困難を乗り越えていくことが必要だ、という江戸時代に上杉鷹山が提唱した考え方が元になっているそうです。

 

被災地支援活動を通してこの言葉を知ったとき「あ・・・これだ」と、すとーんと胸に落ちてきました。

この「三助」は何も災害のような有事にだけ必要な話ではない。

自助—自立する力

共助—思いやりの心をもって周囲と協働する力

公助—将来大人になったとき社会に貢献する力

この力をつけるための教育を子どもたちに与えたい。

もしかしたらそれは学校の役割なのだけれど、私はイチ教育に携わる者として、こういうことを子どもたちに伝えていきたい・・・。

 

気が付くと、何十年も付き合いがあるような親友となっていたミヤザキケンスケとの出会いと支援活動は、震災によって混乱し続けていた心を静めさせてくれただけでなく、いつの間にか私自身が仕事を通して何を目指したいのか、それにくっきりとした道しるべを与えてくれていました。

 

《続く》